はじめに

多くの方は、音楽によってリラックスしたり、慰められたり、
励まされたりした経験があると思います。
そこでは何が起きているのでしょう。
医療・教育・福祉、さらに最近では健康な人への健康促進や被災者への支援などにも
音楽の力を利用した音楽療法が行われています。
音楽療法とはどんな理論に基づいて、
どのような人に、どのように行われているのでしょう。

日本音楽療法学会による音楽療法の定義

日本音楽療法学会(理事長:藤本禮子)は、音楽療法を以下のように定義しています。

音楽療法とは、音楽の持つ生理的心理的社会的働きを用いて心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、問題となる行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること。

日本音楽療法学会  

それでは、音楽の持つ生理的、心理的、社会的働きとは具体的にどのようなことでしょうか。それぞれの内容を図にしてみます。

\脈拍・筋・皮膚温の変化、心身のリラックス|音楽の社会的働き 集団化・一体化、社会性・協調性|音楽の心理的働き 慰め励まし、感情の誘発・発散・高揚・鎮静、浄化

受動的音楽療法と能動的音楽療法

音楽療法には、音楽を聴くことを中心とした音楽療法と、参加者が音楽療法士と共に音楽活動(歌、楽器演奏、音楽に合わせた身体運動など)を行うことを中心とした音楽療法の2種類があります。
音楽を聴くことを中心とした音楽療法を受動的音楽療法と呼びます。
受動的音楽療法の代表的なものには、東ドイツの音楽療法学者Ch・シュワーベが開発したRegulative Musik-therapie(RMT)や、アメリカのH・L・ボニーが開発した音楽イメージ誘導法(Guided Imagery and Music GIM)があります。
これらの音楽療法では、音楽療法を受ける人(以下対象者)と音楽の間に音楽療法士が介在しますが、音楽療法士の関わりよりも音楽を聴くことが中心になります。
一方、音楽療法士と一緒に行う音楽療法を能動的音楽療法と呼びます。能動的音楽療法では、音楽療法士と対象者が一緒に歌唱活動・楽器活動・音楽に合わせた身体活動などの音楽活動を行います。そこでは音楽はもとより、音楽療法士の関わりも重要な意味を持ちます。これからご説明する音楽療法は、能動的音楽療法が中心になります。

音楽療法の対象者と効果

乳幼児期から高齢期まで、病気の人から健康な人まで、なにか気になること、問題を抱えている人は誰でも「気になること、抱えている問題」を解決することを目的として音楽療法セッションに参加できます。

音楽療法では、対象者と一緒に行う音楽活動を「音楽療法セッション」または「セッション」と呼びます。

音楽療法セッションの様子「フォトアルバム」▶▶

音楽療法セッションに参加することによって心身機能に反応が起き、それらが活性し行動の変容など様々な効果が生まれます。図のように、子どもも、大人も、さまざまな生きにくさが改善され、イキイキと健康的になります。

落ち着いて坐っていられない→合奏に集中して、落ち着いて坐っていられるようになった|思うように声が出せない→声を出すのが楽になって、一緒に少し歌えるようになった|こだわり行動のために動けなくなってしまい苦しい→こだわり行動が軽くなり、みんなと一緒に活動できるようになった|脳梗塞後遺症のために手や体が自由にならない→今まで鳴らせなかった楽器をきれいな音で鳴らせるようになった|人と付き合うことが苦手→音楽療法セッションで仲間ができた|気持ちが塞いで→音楽療法の後、明るい気持ちで家に帰れるようになった。帰宅しても明るい気分が続くようになった|いつまでも健康でいたい→皆と一緒にする活動が楽しく、セッションが待ち遠しく、元気に通っている

音楽療法を受けられた方のご感想「参加者の声」▶▶

音楽教育・音楽活動と音楽療法の違い

●音楽教育と音楽療法

音楽教育が主として音楽知識や音楽技能の獲得を目的とするのに対して、音楽療法は音楽を使って対象者が抱えている問題の解決や、対象者の様々な可能性を伸ばし・広げることを主な目的としています。たとえば、心の安定、障がいからくる生きにくさの軽減、健康の維持・改善など、参加する方の状態に合わせて参加する方の希望を達成することが音楽療法の目的となります。
音楽療法士は、対象者が「何かを覚える」「何かができる」ようになることに加え、健康に向かうためにプラスになることを一つでも体験していただくことをめざします。

●音楽活動と音楽療法

施設や病院や地域などの音楽活動でギターを弾きながらみんなと一緒に楽しく歌ったり、カラオケが上手な人がいてその人の歌を聞いたり一緒に歌ったりして、気分がすっきりしたり力づけられたり、新しい友達ができたりすることがあります。
音楽療法士は、音楽活動を通して「今・ここで」楽しく対象者と関わったり、力づけたりするだけではなく、今そこにいる対象者の今後の変化を予測して、今どんな関わりをしたらその人たちを最もよい方向に導けるかを考えて音楽活動を行います。
また音楽活動場面でできるようになったことが、日常場面でもできるようになることを目指して音楽活動をします。

音楽療法=[楽しい 力づけられた 友達ができた]+[将来こうなってほしい 改善のためにはこの歌を 維持のためにはこの楽器を 日常でもできるように]

音楽療法士の資格を取得するには

日本音楽療法学会認定音楽療法士の資格を取得するためには、2つの方法(コース)があります。
一つは、日本音楽療法学会が指定した資格取得に必要なカリキュラムを備えている学会認定の専門学校や大学で学ぶ方法です。これを「認定校コース」といいます。
もう一つは大学や専門学校などを卒業し社会で働いている人たちが、学会が用意しているコースで学ぶ方法です。これを「必修講習会コース」といいます。
詳しくは日本音楽療法学会のサイト(http://www.jmta.jp)をご覧下さい。
MMTでも「日本音楽療法学会必修講習会コース受講者の資格取得申請」や「認定音楽療法士の資格更新申請」に必要なポイントを取得することが可能な研修会を主催しています。

MMTの講演会や研修会「音楽療法士及び志望者向情報」▶▶

ページ作成の
参考文献

松井紀和著「音楽療法の手引き」1980年 牧野出版
村井靖児著「音楽療法の基礎」1995年 音楽之友社
藤本禮子著「高齢者の音楽療法~楽器演奏のすすめ~」2013年 春秋社
宮本啓子・二俣泉編著「音楽療法を知る~その理論と技法~」2014年 杏林書院
中山晶世・二俣泉・竹内康二著「音楽療法士のためのABA入門」2006年 春秋社

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